xAPI ( Experience API ) は、米国 ADLにより公開された「訓練&学習アーキテクチャ」の一部です。学習教材に限定されず、トレーニングの履歴データ等も共通形式にて収集・蓄積することにより、高度な分析結果の利用を通して、アダプティブラーニングを実施することが可能です。
また、xAPI 仕様に基づく学習管理システム用の規格 "cmi5" も ADL より公開されています。弊社では、cmi5版 LMS である「xSTAGE / LMS」 の提供も行っております。 xAPI仕様では既存でご利用のアプリケーションと連携したフレキシブルなシステムを構成することが可能です
verbsリストxAPI に関する情報は、米国 ADL、もしくは IEEE 等から発信されていますが、
日本国内では情報が少ないため、このサイトでは、それらの情報をとりまとめて発信します。
今後、新たな情報が出て来る際には、随時、追加掲載していきます。
本記事の公開:2025年 5月 15日 現在
ADL は米国国防省内の組織であり、分散学習による最高品質の教育・トレーニング・インフォーマル学習を提供するためのベストプラクティスを推進しています。 ADL は米国国防総省のみでなく、世界中のパートナー・業界・学界にも広くサービスを提供することを目的としており、将来を見据えた分散学習トピックの思想的リーダーとしての役割を果たしています。 ➡https://www.adlnet.gov/
学習経験データの相互運用性のために xAPI 規格に準拠した共通形式の履歴データにすることを「ステートメント定義」と言います。
1個の xAPI ステートメントには 「誰が( Actor )」「何を( Object )」「経験したか( Verb )」という体系で記述する決まりになっています。
追加の情報は Context や Result、そして timestamp に記載されます。こうして作成されたステートメントは xAPI 専用のデータベースである LRS によって検証され、合格すれば保存されます。 また、xAPI はアプリ間で学習経験データをやり取りする際に使用される API 転送方法を標準化することによって、相互運用性を実現します。
ステートメント定義における「verb」は任意に設定することができますが、同一の verb であっても利用者によって意味が異なるケースがあります。
そのため、これは事前に定義された IRI を指定する(必須)ことにより確認することができます。
これが「xAPI プロファイル」であり、特定のドメイン(業界や特定領域)における語彙と使用規則のセットです。
ADL では、各組織が登録して公開できる「xAPI プロファイルサーバー」を提供しています。 ➡https://profiles.adlnet.gov/
xAPI ステートメントのインプットは LMS に限らず、学習アプリケーション、デジタル教科書、人事情報システムや学生情報システム等のデータも対象とすることができます。 また、動画配信システムやシミュレータ、さらには SNSの発言情報等々、あらゆるデータを共通のフォーマットに統一して投入します。インプット側の LRP から直接に記録する方法と、LRP の既存の履歴データを xAPI ステートメントに変換して記録する方法があります。
※ ジンジャーアップでは、各 LRP が出力する履歴データを xAPI ステートメントに自動変換するコンバーターを提供しております。 これにより、既存 LRPシステムの履歴出力機能を改訂することなく、LRS への xAPI ステートメントの記録が可能になります。
適合LRS
ADL は、各事業者が作成した LRSが仕様に沿って正しく準拠して作成されているか、1300項目以上に渡って厳しく自動審査する「テストスイート」を提供しています。
このテストを 完全クリアすると、ADL は「適合 LRS」として認証し、リストに掲載されます。ADL は LRS システムの構築において「適合 LRS」を採用するよう、強く推奨しています。
適合LRS に記録された xAPI ステートメントは規格に準拠したデータであるため、複数の 適合 LRS 間における相互運用性が守られます。
➡https://adopters.adlnet.gov/products/all/0
※ ジンジャーアップ開発の LRSは、このテストに合格し、ADLが発表する「適合 LRS一覧 」に掲載されています。
現在、全世界で 40社程度の合格状況の中で、国内では当社が唯一です。
➡https://www.gingerapp.co.jp/service/lrs_server.html
xAPI は、LRP が別々に取得する複数の学習経験ログデータを LRS に共通形式で記録統合して分析することにより、教育研修の実施・管理、そして測定方法に革新をもたらすものです。
例として、
適合 LRS 間では相互運用性が保てるため、他の適合 LRS が記録している学習経験データを共有することが可能です。関係会社間や省庁間にて人事異動があっても継続してデータ活用することができます。
既に、欧米では、このような積極利用が行われており、VISA,トラベラーズ,イントゥイット,NHS,ウォルマート,ケンタッキーフライドチキン,ダノン,キャタピラー,シティバンク,ベライゾン等々の企業において、それぞれの目的に応じた導入事例が出ています。また、米国国防総省、および、その他の連邦政府機関では xAPI の適応が義務付けされつつあります。日本国内においては、初等中等教育における活用の検討が進んでおります。
- LRP による詳細のアクションをアクションごとに LRSに記録することができます。学習やトレーニングの開始・終了、成績の合否のみならず、 各受講者がどういう時間帯にどういったパターンで学習しているか等々の情報を取得でき、より詳しい比較分析が可能となります。
等
- 経年において利用する教材が変更となった際にも、変数を加味することにより、継続して成績管理が可能となります。
- 教材の学習状況を集計分析することにより、次回の改訂時に、繰り返し参照されている部分は追加説明、参照が少ない部分は圧縮するといった教材の改善を図ることができます。
- 長期データの蓄積により、現時点での受講者と傾向の近い先輩データを抽出し、今後の学習・トレーニングにおいて、同様の傾向を取る可能性が高いものとして、事前把握が可能となります。
- 個別単元の成績と総合成績との相関関係を分析することにより、重要個別単元の学習を強化する指導も可能です。
1990年代、インターネットの利用拡大と共に分散学習方式が広がりました。まず、航空業界において教材の相互利用のための共通化がすすめられました。
- 1998年: AICC ( Aviation Industry Computer-Based Training Committee ) がCMI ( Computer Managed Instruction ) Web版をリリース
その後、大学や企業間においても、異なった LMS でも相互運用できる教材のための規格が ADL より発表され、続いて改良が重ねられました。
- 2001年: ADL が SCORM ( Shareable Content Object Reference Model ) 1.2 をリリース
- 2004年: ADL が SCORM2004 をリリース
一方、AICC では 2010年から CMIと SCORM をリプレースするプロジェクトが開始されていました。
この間、通信やデバイス等テクノロジー急速な発展に伴い、ADL では、システムと学習経験履歴との相互運用性のための規格検討が進められました。
そうして、xAPI がリリースされます。
- 2013年: ADL が xAPI ( Experience API ) Ver.1.00 をリリース
※ DLC デジタルラーニングコンソーシアム による日本語翻訳ファイル(Ver. 1.02) ➡https://www.elc.or.jp/files/user/doc/tincan/xAPI_ja.pdf
AICC の CMI5 プロジェクトは xAPI が発表されたため、 この規格をベースにして検討されることとなり、xAPI 規格上の LMS 機能の規格が ADL から発表されました。
- 2016年: ADLが cmi5(シーエムアイ・ファイブ) Ver. 1.00 をリリース
※ DLC デジタルラーニングコンソーシアム による日本語翻訳ファイル ➡https://www.elc.or.jp/files/user/doc/tincan/cmi5_spec.pdf
- 2017年: ADL が xAPI Ver. 1.03 をリリース
➡https://github.com/adlnet/xAPI-Spec/その後、xAPI 規格は電気・電子工学分野の学会である IEEE にて検討が進められました。
- 2023年:xAPI Ver 2.0 = IEEE 9274.1.1-2023 としてリリース ➡https://opensource.ieee.org/xapi/xapi-base-standard-documentation
IEEE 9274.1.1 は、JSONデータモデル形式と学習者体験データ追跡およびアクセス用の RESTful Webサービスを対象としています。
xAPI ver 1.03 までは xAPI ステートメントを検証・記録するデータベースである「LRS」に関してのみの記述でしたが、IEEE 9274.1.1 では「LRP」と「LRC」の仕様が追加されております。
今後「LRS」に記録する「LRP」 、および、データを利用する「LRC」側の機能も、この規格に準拠していく必要があります。
これにより、xAPI は業界標準から国際標準となり、正式な技術標準として確立されることは、世界中での xAPI の普及と利用を促進することになります。
※ IEEE (The Institute of Electrical and Electronics Engineers) (アイ・トリプル・イー) :電気電子学会。電気・電子工学分野の世界最大級の専門家組織で、技術標準の策定など幅広い活動を行っている。
xAPI 規格上の LMS 機能規格である cmi5 には以下の特長があります。
- 学習管理機能である「LMS」と コンテンツ管理機能である「コンテンツマネージャー」、そして学習履歴のデータベースである「LRS」が分離しており、それぞれ通信して動作します。
- これにより、「LMS」「コンテンツマネージャー」「LRS」は、それぞれ別々のドメインに設置することが可能です。
- 当然、LRS は独立して稼働できますので、外部の LRP の学習経験ログも記録でき、複雑なシステムを自由に構成可能です。
- コンテンツマネージャーも複数のサーバーに設定できるため、例えば、一つの学習コースにおいて、チャプター1は自社のコンテンツを、チャプター2は外部のコンテンツを、チャプター3は海外のコンテンツを利用するといった利用が出来ます。
その上で、すべての学習経験履歴を LRSに記録できます。
等
ジンジャーアップでは xAPI / cmi5 規格に準拠した LMS である「xSTAGE / LMS」も開発し提供しております。
昨今の生成AI の発達は目覚ましく、xAPI と連動することにより、さらに新たな可能性が出てくる見込みです。
- 組織内コンテンツ(教材に限定されず、規定・マニュアル・企画書等を含む)の検索と評価、レコメンド
- 生成AI による各 LRP の学習経験ログの xAPI ステートメント自動変換
- LMS 機能と生成AI 機能連動による教材作成、履歴管理
- 生成AI による LRS 記録データからの分析レポート自動作成
- LRS 記録データを活用した RAG の精度向上
等
ジンジャーアップでは、こうした生成AI 連動による機能拡大も進めており、今後、サービスリリースと共に情報公開して参ります。
xAPI の cmi5 規格に準拠した LMS です。レスポンシブウェブデザインによりスマホ等にも最適表示されます。 コンテンツサーバーによる教材一元管理や、複数テナント対応等の先進機能を有しております。 LRS を標準装備しており、複数の LMS や教育ツール等の学習経験ログを記録して分析することができます。
ADL により「適合LRS」と認定されているジンジャーアップ独自開発の LRS です。 LMS 等の学習管理システムのみならず、トレーニングツールやシミュレーター、学習アプリ等の学習経験データを xAPI 仕様に準拠しているかを検証した上で記録します。
LRS に統合記録される複数の教育関連ツールの学習経験ログを分析してレポートを出力するサービスです。 これまで別々であった教育関連システムの学習経験情報の相関関係を分析したり、業務システムデータとの関連性分析など、新たな視点での高度な分析ができます。
各 LRP の学習経験ログを xAPI 形式のデータに自動変換するための機能です。 初期段階において、変換すべき xAPI ステートメントを検討し決定した上でコンバーターに設定します。ここで変換された後、自動的に LRS にステートメントが記録されます。